〜旅行的調査(!?)〜
台湾編・南部(1)
☆台湾南部1(ルカイ、プユマ)
台湾島の南部に居住するルカイとプユマが利用するキダチトウガラシを、屏東県霧台郷(霧台、神山村、上霧台村、阿里(アデリ))、屏東県三地門郷(青葉村)、高雄県茂林郷(茂林、多納村、萬山村)、台東県金峰郷(嘉蘭村、正興村)、台東県卑南郷(下賓朗、東興村)で調べてきました。屏東県三地門郷青葉村ではルカイの林麗英のおとうさん・おかあさん、そして青葉村の人々には本当にお世話になりました。ここに感謝の意を表します。Malanunga!(調査では公平な気持ちでいるべきですが、ほんの少しだけ、ほんのほんの少しだけルカイに肩入れしているような気がします・・・) ・屏東県霧台郷、三地門郷(ルカイ(Rukai))
次に霧台へ向かいました。山を登り始めると前日に行った嘉義県阿里山郷達邦とはかなり景色が違いました。達邦ではビンロウや果樹などが山にたくさん植えられており植生が悪かったのに対し、こちらの山は自然な植生、という感じを受けました。聞いてみるとこのあたりは森林が保護されているようです。去年の台風の影響で一箇所大きくがけ崩れが起きていましたが、そのような箇所も少なく、植生の影響だろうか、と思わせました。霧台の入り口に着くと、盛大なルカイの結婚式が行われていました。もう少し山を登ると神山という地域に入りました。そこに林麗英さんの知り合いのおばあさんが住んでいるので、村の中に車を止めました。車を止めたところの花壇にキダチトウガラシの苗がありましたが、果実はついていませんでした。おばあさんからキダチトウガラシの情報を得ましたが、おばあさんは栽培していなかったため、村の中を散策することにしました。村の中にはルカイの伝統的な石作りの家の面影を残した建物がありました。歩いているとナス科の植物をよく見かけることに気づきました。ナス(花が紫・白両方)、イヌホウヅキ、タマサンゴなど。ルカイの嗜好が伺えます。キダチトウガラシの苗はいくつかの花壇で見かけましたが、花や果実がありませんでした。もうこの村ではキダチトウガラシの果実は観察できないか、とあきらめて、車を止めている場所への最後小道を歩いていると、ついに見つけました。果実はひとつしかありませんでしたが確かにキダチトウガラシ。それも小笠原型のようでした。すぐにそこの住人にトウガラシ属の話を聞いてみました。トウガラシ属の調味料もありました。ビンロウをクチャクチャと噛んでいるおばあさん二人と、ちょこんと座っているおばあさん、そして話をいろいろ聞いてくれるお兄さんと一緒にトウガラシ属の話で小一時間盛り上がりました。
次の村である上霧台に着いたときちょうど昼時だったので一軒のお店に入りました。そこはルカイ出身の有名な歌手の家で弟さんがお店を切り盛りしていました。そこで煮魚、焼きソバ、チャーハン、キマメのスープ、揚げ豚などを食べました。昼食後村を散策しました。美しい景色のところで、段々畑でアワやトウモロコシなどの作物を栽培していました。なかなかキダチトウガラシが見つからず、あそこの民家で村も終わりだし、そこまでで今日の調査はやめよう、と思っていたら、段々畑の階段からキダチトウガラシがニューっと生えていました。すぐさま観察を開始。果実は緑熟色が緑色の少し太った形で今までに見たことのない系統でした。そしてそばの工房で仕事をしていたおっちゃんに話を聞いてみると、おっちゃんのおばさんの畑らしい。とりあえずおっちゃんにトウガラシ属に関するインタビューをして、畑の持ち主のおばちゃんが現れたのでおばちゃんにもインタビューをしました。
青葉に帰ると4時くらいでまだ明るかったので、林さんのご両親の畑を見ることにしました。アワが実っていろ畑を横目に見つつ、ご両親の畑につきました。この時期はあまり何も植わっていませんでしたが、キダチトウガラシがあったので観察。あとあと聞いてみると、キダチトウガラシは植えたのではなく、勝手に生えてきたそうな。ほんまかいなと思い、何で切らないのか(刈らないのか)と尋ねると、キダチトウガラシは食べ物だし、切ったら神様?に悪い。水をあげないせいで勝手に枯れるのはかまわないが、わざわざ切るのはよくない、とのことでした。不思議な話です。豚6匹、ニワトリ10羽弱、ヤギ一頭を飼っていました。サトイモを燻製にした保存食はカリカリとした食感で、味もおいしかったです。
次の年に霧台のかなり奥に位置する阿里(アデリ)へ行きました。どんどん山を登ります。去年来た霧台を越えてずんずん登る。だんだん涼しくなってきます。きもちいい。ところどころで土砂崩れの痕跡がありました。台風や大雨で崩れるらしいです。今日の夜に台風がくるとの情報。いつでも崩れそうなそのがけを見ると、恐怖を感じました。佐々木高明さんが調査をしたキヌラン村を通り過ぎ、ついにアデリへ着きました。村へ行き、林さんがアワ酒の作り方を見る予定だったところへ行きました。そこではちょうどアワとアカザを混ぜているところでした。4.5斤×14のアワをまず朝四時に炊き、バナナの葉に包んで置いておきます。昼過ぎにそのタネと片手に山盛り一杯のアカザの粉を混ぜ、つぼにいれて密閉し、後は置いておくだけ。三日もすれば発泡しはじめ、一週間くらいで飲めるようです。そこには自家製のタバコをパイプで吸っている粋なおばあちゃんがいたのでキダチトウガラシのインタビューをしました。おばあちゃんは台東から嫁に来たそうです。ついでに他のおばあちゃんにもインタビュー。みんないろんなお酒を飲んで上機嫌でした。ポーリータ、ビール、モチゴメから作ったどぶろく、米酒で煮た鳥のスープ、ご飯はサツマイモとマメをまぜたおかゆみたいなのを食べていました。すこし雲行きがあやしくなってきたので、土砂崩れで道が通れなくなると困るので、早めにアデリを出ることにしました。そのままゆっくり遊覧バスのように山を下りました
・高雄県茂林郷(ルカイ(Rukai))
次に一番奥の集落である多納村へ向かいました。まずお昼ご飯を食べました。タンメン。それから食堂の近くでお年寄りに出会ったのでインタビュー。その向かいのお店のお姉さんにもインタビュー。小辣椒の研究をしていると言ったら笑っていました。そこにはキダチトウガラシの蒸留酒漬けがありました。ためしに果実をかじったところ、やっぱり辛かったです。でも香りがいい。キダチトウガラシは畑にあるらしいが時間がないとのことで、見に行けませんでした。車を適当に走らせていると畑が見えたのでその方向へ向かいました。程なく畑は見つかり車から降りて少しキダチトウガラシを探しました。まあないだろうな、という雰囲気のところだったが、やっぱりありませんでした。そこにバイクのおばちゃんが通りかかったのでインタビューをしました。この辺はないよー、最近少ないよーといっていました。また適当に車を走らせ、畑を見ながらキダチトウガラシを探しました。すると見つかった!フェンスのすぐそばに生えている。やった。
時間がなくなってきたので、次の村、萬山村へ向かいました。多納村と萬山村の間くらいにあった商店へより、そこのおばちゃんにインタビューしました。その店には蜂の幼虫と蜂の生のものとお酒につけたものがありました。昔は幼虫しか食べなかったようです。スズメバチに見える(でも詳しくはわかりません・・・)。原住民も蜂を食べるとは驚きました。その後萬山村へ着き、車をおりてぶらぶらしていると、この村に嫁に来たパイワンのおばちゃんがキダチトウガラシならあっちにあるよ、教えてくれたので向かってみました。確かにありました。そうするとパイナップルを背負ったかわいいおばあちゃんがいたので声をかけてみました。結構日本語が話せます。75歳のおばあちゃん。パイナップルを収穫したと同時に、収穫したパイナップルの上の部分を今から植えつけるようでした。なんとそのおばあちゃんがむかった畑はあのキダチトウガラシがあった畑。おばあちゃんに断りをいれて、遠慮なく観察しました。おばあちゃんに話を聞こうとおもったら忙しいようで行ってしまいました。隣の畑にいたおばあちゃんのいとこのおじさんにインタビューをしました。このおじさんはかなり日本語が話せました。父親から教えてもらったと言っていました。
・台東県金峰郷(ルカイ(Rukai)) ・台東県卑南郷(プユマ、ルカイ)
☆南部に住む台湾原住民のトウガラシ属・ショウガ・山胡椒のまとめ
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