☆小笠原諸島
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父島大村地区 |
■俗名:硫黄島トウガラシなど |
■特別な利用例:刺身を食べる時ワサビの代わりに使用 |
キダチトウガラシが小笠原諸島(父島)へ導入されたのはつい最近のことで,まだ決まった呼び名がない状況です。トウガラシ,島唐辛子,硫黄島トウガラシ,鷹の爪(!?)などと呼ばれていました。父島の農協や御土産屋さん,父島行きのフェリーがでている東京の竹芝桟橋などでは,キダチトウガラシの加工品が特産物として売られています。
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■キダチトウガラシの特産品(父島の農協にて)
A:キダチトウガラシを酢に漬けこんだもの
B:キダチトウガラシみそ
C:キダチトウガラシ薬膳ラー油 |
キダチトウガラシは10〜20年前に硫黄島から父島へ導入されました。硫黄島は父島より260km南,サイパンより1,100km北に位置し,硫黄火山列島に属します。第二次世界大戦前は1,000人以上が硫黄島に居住していましたが,戦況が悪くなると強制的に全員内地へ疎開させられました。敗戦後はアメリカが硫黄島に駐留し,現在は自衛隊が管理し常駐しています。硫黄島は現在一般人の居住が許されておらず,立ち入りも禁止されていますが,元島民や硫黄島で親族を亡くされた方は墓参等で一年に一度硫黄島を訪れることができます。
硫黄島ではキダチトウガラシが自生しているようです。いつ頃硫黄島にキダチトウガラシが導入されたのかわかりませんが,元島民の話によると「戦前既にキダチトウガラシは硫黄島にあった」ということです。父島に導入されたキダチトウガラシは,硫黄島を訪れることのできた人がそこで果実を採取し,父島へ持って帰ってきたものです。ですから,「硫黄島トウガラシ」という呼称が相応しいと考えています。
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■硫黄島トウガラシの花
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■軒先で栽培される
硫黄島トウガラシ(父島)
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■道端で自生している硫黄島トウガラシ(チラホラ見かける) |
父島では道路の道端でキダチトウガラシを見かけます(知っている人以外には,果実がなければただの雑草にしか見えませんが)。海岸の側を走る道路沿いではキダチトウガラシを見かけましたが,山の中を走っている道路沿いでは確認できませんでした。自生しているキダチトウガラシは,栽培されているものからのエスケープと考えられます。硫黄島トウガラシの果実は2cm程と小さく脱落性(萼と果実が離れやすい)があり,鳥に食べられやすい系統といえます。ですから,父島で見られる自生のキダチトウガラシは,鳥による散布の結果である可能性が高いと思います。父島ではメジロがキダチトウガラシをよくついばむらしく,鳥に食べられた後のような果実も見かけました。道路によって自生しているキダチトウガラシが確認できたりできなかったりするのは,鳥の住み分けによる結果だとも考えられます。
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■硫黄島トウガラシの果実 |
■自生が確認された地点(父島)
(●:確認地点,---:幹線道路) |
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