1. C. annuum
L.
(和名:トウガラシ)
C. annuum は世界でもっとも多く利用され,経済的に重要な種です。果実の大きさや形,色は多様で,温帯〜熱帯の広い地域で栽培されています。日本では鷹の爪,本鷹,八房などの辛味種や,獅子唐などの甘味種があります。ピーマン,ベルペッパー,パプリカ(ハンガリーのパプリカは有名です)なども全てC. annuum です。
・花色:白(稀に紫) |
・花弁:スポットはなし |
・花軸:1(とされているが,2-3つけるものもある) |
・種色:クリーム色〜黄色 |
2. C.
frutescens L. (和名:キダチトウガラシ)
C. frutescens は世界の熱帯・亜熱帯地域に分布しています。ピザを食べる時に使うタバスコソースの原材料である「タバスコ」が数少ないの経済品種の1つです。C. frutescens の詳細は次項のキダチトウガラシを参照してください。
・花色:黄緑 |
・花弁:スポットはなし(とされているが,スポットのある系統も存在(下の写真)) |
・花軸:2〜3 |
・種色:クリーム色〜黄色 |
3. C.
chinense Jacq.
C. chinense はC. frutescens と非常に近縁な種で,現在では「C. frutescens - C. chinense complex」とまとめて考える研究者もいます(See Pickersgill (1966);
Heiser (1976);Yamamoto
(1978))。C. chinense の多くは果実が下垂し(→果実が鳥などから食べられにくい),萼と果実が離れにくく(→植物が栽培化されると非脱落性になりやすい。イネやコムギなどが顕著な例),柱頭も短い(→自家受粉がより高頻度で起きる),という性質を持っています。C. chinense の方がより栽培種(C. frutescens の方がより野性種)に近いといえるでしょう。原産はアマゾン流域の低地と考えられており,西インド諸島やメキシコ〜ボリビア,ブラジルなどで見られます。有名な品種は「ハバネーロ(Jabanero)」で,世界で最も辛いとされています。最近日本でも輸入雑貨店へ行けば入手できます(ハラペーニョ(Jalapeno)とお間違いなく。ハラペーニョはアメリカで一般的に食べられている品種で,C. annuum です)。
・花色:黄緑 |
・花弁:スポットはなし |
・花軸:2〜5 |
・萼:萼と花軸の間に環状のへこみがある,萼が歯状
(C.
frutescens との違いに用いられるが
C.
frutescens の中には中間的なものも存在し不明確) |
・種色:クリーム色〜黄色 |
(写真提供:樋口浩和様,タンザニアで栽培されているC. chinense ( pilipili buzi と呼ばれる))
4. C.
pubescens Ruiz & Pav.
C. pubescens が他の栽培種4種と大きく違う点は,花が紫色で種が黒いところです。また種名の
pubescens とは毛が生えているという意味で,茎や葉に毛が見られます。主にアンデス山脈,メキシコや中央アメリカの高地で栽培されています。アンデスでは「ロコト(rocoto)」と呼ばれています。C. pubescens の祖先種は未だ同定されていませんがC. eximium やC. cardenasii
がそうではないかと考えられています。
・花色:紫 |
・花弁:スポットなし |
・花軸:1 |
・種色:黒 |
5. C.
baccatum L.
C. baccatum にはC. baccatum var. baccatum
(野生種)とC. baccatum
var. pendulum (栽培種)があります。C. baccatum var. baccatum はアルゼンチン,ボリビア,パラグアイ,ペルーに見られ,C. baccatum var. pendulum
は南アメリカの西側でよく見られます。他の栽培種4種と大きく違う点は,花に黄色いスポットが見られるところです(ただし,少なくともC. frutescens にもスポットを持つ系統が存在します)。アンデスでは「アヒ(aji)」と呼ばれています。C. baccatum の分類(taxonomy)については Eshbaugh (1970)や Yamamoto (1978) を参考にしてください。
・花色:白 |
・花弁:黄色のスポットあり |
・花軸:1(C.
baccatum var. pendulum)
2〜(C.
baccatum var. baccatum) |
・種色:クリーム色〜黄色 |
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(Reference)
Andrews, J. (ed). 1995.
Peppers - the domesticated Capsicums. New edition.
University of Texas Press, Austin, Texas.
Eshbaugh, W. H. 1970. A biosystematic and
evolutionary study of Capsicum baccatum
(Solanaceae). Brittonia 22:31-43.
Heiser, C. B. JR. 1976.
Peppers: Capsicum (Solaneceae).
In Evolution of crop plants,
edited by N. W. Simmonds, pp. 265-268. Longmans, London.
Pickersgill, B. 1966.
The variability and relationships of Capsicum
chinense Jacq. Ph. D. dissertation, Indiana
University.
Prince,
J. P., V. K. Lackney, C. Angeles, J. R. Blauth, and M. M.
Kyle. 1995. A survey of DNA polymorphism
within the genus Capsicum and
the fingerprinting of pepper cultivars. Genome 38:224-231.
Walsh,
B. M. and S. B. Hoot. 2001. Phylogenetic
relationships of Capsicum (Solanaceae)
using DNA sequences from two noncoding regions: The
chloroplast atpB-rbcL spacer region and nuclear waxy
introns. International Journal of Plant Sciences 162:1409-1418.
Yamamoto, N. 1978. The
origin and domestication of Capsicum
peppers. Ph. D. thesis, Kyoto University, Kyoto, Japan.
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